強力な協力者

  • 2008.11.25 Tuesday
  • 01:08

 さて、今回は予告通りTAについての話である。予告を書いてから、ゆうに1週間経っているが。前回の更新に2ヵ月以上かかったブログとしては、まさに未曾有の速さでの更新となる。

 「TA」と言ってもあまり一般の人にはなじみがないかもしれないTAというのは「ティーチング・アシスタント」の略で、要するに授業や実験実習で教員に協力し、教えることを補助する仕事である。授業よりも人手が必要な実験実習に配置されることが多く、大学院やポスドクが担当する。ポスドクが担当する場合には、既に博士号を取っている人間である訳なので、実質的に実習の一部分を取り仕切ることになることもある。大学院生の場合はそこまでは行かず、普通に教員の補助にとどまることが多いが、意欲的な学生の場合にはポスドク以上に積極的に教える立場にまわる者も少なくない。

 ある意味、教員になってからきちんと指導ができるようになるための訓練のようなものだが、ちゃんと給料が出る。時給は大体1000−1500円くらいの場合が多く、交通費がかからない(なにしろ大学内なので)ことを考えると、バイトとしてもそう悪くはない。

 今年は学内で大学院生向けの教育プロジェクトが立ち上がっており、その一環としてわが自然史研究学科へ大学院生TA用の予算が多めに配分されている。私が担当する1年生向けの基礎生物学実験では普段はTAを使うことはないのだが、この特別予算のために今年はTA配置できることになった。とりあえず、その辺で閑そうに実験をしていた葉名真樹子に声をかけてみる。


ワタシ(以下、渓):というわけで、TA費がある訳。だから、ハナマキ、あなたに1年生の学生実験のTAをやってもらおうかと思ってるのだけど…念のために聞くけど、TAって何か分かってるわよね?

大学院生の葉名真樹子(以下、葉):ティーチング・アタック

渓:攻撃してどうする。攻撃して。TAはティーチング・アシスタントの略。要するに、実験を受ける学生を補助する役目のことよ。しかし、これまでやらせたことなかったし…。いきなり、ハナマキにTAをさせるのは少々というか多大に不安ね。八月春、あなたはTAってやったことがある?

助教の八月春(以下、春):愚問ですよ、先生。やったことがあるもなにも。これでも昔はTAの鬼、と言われていましたよ。

渓:鬼のTAの間違いじゃないの?

春:とりあえず、ハナマキにTAの心得を教えればいいんですよね? ハナマキ、TAをやるにあたっては3つの大切な「き」があるのよ。

渓:なんだか、今売れている啓蒙本みたいになってきたわね。

春:学生を思いやる「もち」、先生への「づかい」、いざという時の「きんぞくばっと」

葉:了解

渓:ちょっと待て。最後のは何、最後のは? TAに金属バットなんかいるわけないでしょ。危険この上ない。

春:先生、何か誤解していませんか? 金属バットは学生と一緒に連帯感を作り上げ、親睦を深めるために使うんですよ。実験がおわった後とかにやるんです。

渓:…野球を一緒にやるってこと? 実験おわるとたいてい夜でしょう? 暗いわよ。私でさえ、暗いから最近は早めに帰るように心がけているんだから。

春:野球じゃないですよ、一緒にやるのは。

葉:会話を総合します。野球専用金属棒。漆黒の夜道。帰路を急ぐ渓中先生。なるほど

春:やだなあ、ハナマキ。もう少しオブラートに包んで言いなさいよ。暗いところで素振りしていると時々事故が起きますよね、とか。

渓:どこがオブラートなのよ。毒で毒を包んでどうする。もう少しまじめにアドバイスしなさいよ。

春:私は至ってまじめですが。まあ、いいですけど。もう少し具体的なアドバイスってことですよね? いい、ハナマキ、TAをやっているとこちらの話をなかなか聞いてくれない学生がいるのよ。ひどいのになると無視して勝手に実験を進めて失敗したりするわけ。そういうとき、あなたならどうやっていうことを聞かせる?

葉:腕力

渓:まあ、八月春のアドバイスだとそうなるわよね。

春:先生、私を誤解していませんか? 腕力なんかに訴えるわけがないじゃないですか。いつでも私は言葉の力でいうことを聞かせますよ。

葉:恫喝

渓:まあ、八月春のアドバイスだとそうなるわよね。

春:私はシチリアマフィアじゃないんですけど。そうではありません。きちんとやらないと自分が後で困るよ、と笑顔で説得しますよ。

渓:やっぱり恫喝じゃない。あなたの笑顔は凶器なんだから、そんなことしたら「まじめにやらないと五体満足で帰れないよ」と言っているみたいなもんでしょ。

春:いや、まじめに私は基礎学生実験は、多くのことを学ぶことが出来る大切な授業科目だと思ってるんですよ、先生。大体、昔、先生がポスドクだった時、基礎実験でTAとして私たちを指導してくれましたよね。あれは本当にためになりました。

渓:…珍しくまともなことを言うからには、絶対に裏があるわね。

葉:八月助教には表は存在しません。あるのは裏面のみ

春:人を悪の権化みたいに言うのはやめてくれる? 本当にためになったんですよ、先生がTAをやってくれた実験は。特に、生命の大切さを学びましたね。

渓:ふむん、そうだっけ? 15年近く前のことだし、TAやったこと自体よく覚えてないのよね、実際。確かに指導教員だった大田先生に頼まれた記憶はあるんだけど。生命の大切さってことは…カエルの解剖とかやったんだっけ?

春:いえ、違います。タマネギなどを使った植物の細胞分裂の観察でしたけど。

渓:それで生命の大切さ?

春:はい。うなるピンセット、乱れ飛ぶ塩酸、頭上を飛び交う顕微鏡。1人、また1人と同級生が倒れていき、実験が終わったときに五体満足で立っていられたのは私だけでした。あの時は自分の生命の大切さを心から実感しましたね。

葉:参考にします


するな。

 TAがきちんとしていると実験はとても楽になります。ほとんど任せられるような場合もありますし。逆に、TAがひどいと労力は倍。なぜお金を払って仕事を増やさなくてはいけないんだ、と言いたくなることもあります。これからTAをやる予定の皆さんは、ぜひ3つの「き」を守ってすばらしいTAに、ならないで下さい。

ランキングの方は、おかげさまで若干回復。しばらく更新しなかった間に微妙に勢力図が変わっているような。特に、2位あたりのブログが神新系のにおいがします。私もいろんな意味で傷だらけですが、読んでも何も変わっていないような…ひょっとして、どこか見えないところが変化しているのでしょうか。つむじの向きとか。というわけで、当面は打倒幸せ傷を目標に頑張りたいと思います。よろしく。お時間のあるときにでもクリック投票を→

コメント
お久しぶりでございます。

少々教えて頂きたいのですが、生物系の実験で、塩酸はどのように使われるのでせうか?

もしかして、投擲用に常備されていたのでせうか??

#どうやったら、ピンセットを唸らせることが出来るのか・・と言う素朴な疑問もあるのですが。
  • 温泉カワセミ
  • 2008/11/26 12:11 AM
投擲用ではありません。塩酸は植物の細胞壁や細胞間接着を弱め、酢酸オルセインなどの染色液が細胞内へ浸透しやすくするために使います。なお、投擲用に使っているのは濃硫酸です。

ピンセットは全身全霊をかけ、高速で振り回すと唸らせることが出来ます。まあ、たぶんそういうことをお聞きになっているのではないと思いますが。


  • タニナカキミ
  • 2008/11/26 10:48 PM
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