強力な協力者

  • 2008.11.25 Tuesday
  • 01:08

 さて、今回は予告通りTAについての話である。予告を書いてから、ゆうに1週間経っているが。前回の更新に2ヵ月以上かかったブログとしては、まさに未曾有の速さでの更新となる。

 「TA」と言ってもあまり一般の人にはなじみがないかもしれないTAというのは「ティーチング・アシスタント」の略で、要するに授業や実験実習で教員に協力し、教えることを補助する仕事である。授業よりも人手が必要な実験実習に配置されることが多く、大学院やポスドクが担当する。ポスドクが担当する場合には、既に博士号を取っている人間である訳なので、実質的に実習の一部分を取り仕切ることになることもある。大学院生の場合はそこまでは行かず、普通に教員の補助にとどまることが多いが、意欲的な学生の場合にはポスドク以上に積極的に教える立場にまわる者も少なくない。

 ある意味、教員になってからきちんと指導ができるようになるための訓練のようなものだが、ちゃんと給料が出る。時給は大体1000−1500円くらいの場合が多く、交通費がかからない(なにしろ大学内なので)ことを考えると、バイトとしてもそう悪くはない。

 今年は学内で大学院生向けの教育プロジェクトが立ち上がっており、その一環としてわが自然史研究学科へ大学院生TA用の予算が多めに配分されている。私が担当する1年生向けの基礎生物学実験では普段はTAを使うことはないのだが、この特別予算のために今年はTA配置できることになった。とりあえず、その辺で閑そうに実験をしていた葉名真樹子に声をかけてみる。


ワタシ(以下、渓):というわけで、TA費がある訳。だから、ハナマキ、あなたに1年生の学生実験のTAをやってもらおうかと思ってるのだけど…念のために聞くけど、TAって何か分かってるわよね?

大学院生の葉名真樹子(以下、葉):ティーチング・アタック

渓:攻撃してどうする。攻撃して。TAはティーチング・アシスタントの略。要するに、実験を受ける学生を補助する役目のことよ。しかし、これまでやらせたことなかったし…。いきなり、ハナマキにTAをさせるのは少々というか多大に不安ね。八月春、あなたはTAってやったことがある?

助教の八月春(以下、春):愚問ですよ、先生。やったことがあるもなにも。これでも昔はTAの鬼、と言われていましたよ。

渓:鬼のTAの間違いじゃないの?

春:とりあえず、ハナマキにTAの心得を教えればいいんですよね? ハナマキ、TAをやるにあたっては3つの大切な「き」があるのよ。

渓:なんだか、今売れている啓蒙本みたいになってきたわね。

春:学生を思いやる「もち」、先生への「づかい」、いざという時の「きんぞくばっと」

葉:了解

渓:ちょっと待て。最後のは何、最後のは? TAに金属バットなんかいるわけないでしょ。危険この上ない。

春:先生、何か誤解していませんか? 金属バットは学生と一緒に連帯感を作り上げ、親睦を深めるために使うんですよ。実験がおわった後とかにやるんです。

渓:…野球を一緒にやるってこと? 実験おわるとたいてい夜でしょう? 暗いわよ。私でさえ、暗いから最近は早めに帰るように心がけているんだから。

春:野球じゃないですよ、一緒にやるのは。

葉:会話を総合します。野球専用金属棒。漆黒の夜道。帰路を急ぐ渓中先生。なるほど

春:やだなあ、ハナマキ。もう少しオブラートに包んで言いなさいよ。暗いところで素振りしていると時々事故が起きますよね、とか。

渓:どこがオブラートなのよ。毒で毒を包んでどうする。もう少しまじめにアドバイスしなさいよ。

春:私は至ってまじめですが。まあ、いいですけど。もう少し具体的なアドバイスってことですよね? いい、ハナマキ、TAをやっているとこちらの話をなかなか聞いてくれない学生がいるのよ。ひどいのになると無視して勝手に実験を進めて失敗したりするわけ。そういうとき、あなたならどうやっていうことを聞かせる?

葉:腕力

渓:まあ、八月春のアドバイスだとそうなるわよね。

春:先生、私を誤解していませんか? 腕力なんかに訴えるわけがないじゃないですか。いつでも私は言葉の力でいうことを聞かせますよ。

葉:恫喝

渓:まあ、八月春のアドバイスだとそうなるわよね。

春:私はシチリアマフィアじゃないんですけど。そうではありません。きちんとやらないと自分が後で困るよ、と笑顔で説得しますよ。

渓:やっぱり恫喝じゃない。あなたの笑顔は凶器なんだから、そんなことしたら「まじめにやらないと五体満足で帰れないよ」と言っているみたいなもんでしょ。

春:いや、まじめに私は基礎学生実験は、多くのことを学ぶことが出来る大切な授業科目だと思ってるんですよ、先生。大体、昔、先生がポスドクだった時、基礎実験でTAとして私たちを指導してくれましたよね。あれは本当にためになりました。

渓:…珍しくまともなことを言うからには、絶対に裏があるわね。

葉:八月助教には表は存在しません。あるのは裏面のみ

春:人を悪の権化みたいに言うのはやめてくれる? 本当にためになったんですよ、先生がTAをやってくれた実験は。特に、生命の大切さを学びましたね。

渓:ふむん、そうだっけ? 15年近く前のことだし、TAやったこと自体よく覚えてないのよね、実際。確かに指導教員だった大田先生に頼まれた記憶はあるんだけど。生命の大切さってことは…カエルの解剖とかやったんだっけ?

春:いえ、違います。タマネギなどを使った植物の細胞分裂の観察でしたけど。

渓:それで生命の大切さ?

春:はい。うなるピンセット、乱れ飛ぶ塩酸、頭上を飛び交う顕微鏡。1人、また1人と同級生が倒れていき、実験が終わったときに五体満足で立っていられたのは私だけでした。あの時は自分の生命の大切さを心から実感しましたね。

葉:参考にします


するな。

 TAがきちんとしていると実験はとても楽になります。ほとんど任せられるような場合もありますし。逆に、TAがひどいと労力は倍。なぜお金を払って仕事を増やさなくてはいけないんだ、と言いたくなることもあります。これからTAをやる予定の皆さんは、ぜひ3つの「き」を守ってすばらしいTAに、ならないで下さい。

ランキングの方は、おかげさまで若干回復。しばらく更新しなかった間に微妙に勢力図が変わっているような。特に、2位あたりのブログが神新系のにおいがします。私もいろんな意味で傷だらけですが、読んでも何も変わっていないような…ひょっとして、どこか見えないところが変化しているのでしょうか。つむじの向きとか。というわけで、当面は打倒幸せ傷を目標に頑張りたいと思います。よろしく。お時間のあるときにでもクリック投票を→

実験的な事件

  • 2008.08.15 Friday
  • 01:14

 蒸し暑いある日。ふと床を見ると堀君が倒れている。「ああ、夏だなあ」、と思う瞬間である。


助教の八月春(以下、春):死にかけている人を見て、夏の風物詩みたいに言うのはどうかと思うのですが。

ワタシ(以下、渓):と言いつつ、全く助ける様子がないわね、八月春。

春:まあ、いつものことですから。ハナマキ、標本を押すついでに助けといて。

大学院生の葉名真樹子(以下、葉):労力の浪費なので、拒否します

渓:さすがにちょっとかわいそうになってきたわね。

春:大体、このブログも月刊連載みたいになってきているんですから、堀君、と言ってもなかなか通用しないと思いますよ。人物紹介をしておいた方がいいんじゃないですか。

渓:そうねえ。堀君というのは…えーと、下の名前なんて言うんだっけ?

葉:権二郎

春:違うわよ、ハナマキ。小次郎でしょ

私立明聡大学助教の堀幸二郎(以下、もう台詞はないけど、堀):お、惜しい…幸二郎、です。

渓:あ、生きてたんだ。じゃあ、自力で助かって

春:何か、また倒れましたけど。今のがとどめの一言になったみたいですね。

渓:とにかく、堀君というのは、元うちの研究室のポスドクで今は私立大の助教をやっていて、共同研究のためにたまにまだうちにも来ている男。ま、彼の説明はこれでいいでしょう。もう一生分くらい説明したわ。で、堀君はなぜ倒れてるわけ。

春:えーと、まあ、いつものように後頭部に謎の打撃を受けて倒れているようなんですが…しかし、これは気になりますね。

渓:どこが? 至って日常的な出来事でしょう?

葉:入り口が施錠済みです。

春:あ、ハナマキも気づいた? そうなんですよ、先生、入り口のドアに内側から鍵がかかっているんです。

渓:鍵? 何でまた。

春:さあ…しかし、それよりも問題なのは。先生、鍵持ってますよね。

渓:心の鍵ならだいぶ昔になくしたわ。

春:そういう戯れ言は結構です。あ、持っていますね。で、ハナマキ、あなた学生用の鍵を持っているわよね?

葉:真実への鍵は紛失しました。

春:だから、そういうのはもういいから。ふむん、やっぱり持っているわね。…やはり、気になりますね。

渓:何が?

春:いえ、先生が自分の鍵を持っている、ハナマキが学生用の鍵を持っている、そして私が自分の鍵とお盆休み中の事務室から借りてある鍵を持っている…すると、ですね、この部屋の鍵として元々作られた4本は現在全て私たち3人が持っていることになります。

渓:スペアキーを誰か作ってるかもしれないでしょう。

春:いえ、ここの部屋は結構最新の錠前を使っているらしく、そう簡単にスペアキーは作れないんです。ほぼ間違いなくこの4本しかないですね。

渓:無駄ね。こんな猛獣の檻みたいな研究室に丈夫な鍵をつけてどんな泥棒が入るっていうのかしら。

春:猛獣を閉じ込めておくためじゃないですか、たぶん。

渓:まあ、確かにあなたを見たら鍵を閉めたくなるでしょうねえ。しかし、その4本がここにあることのどこが問題…ああ、なるほど。

葉:堀助教殴打の犯人はこの3人の中に存在

春:まあ、そうなるわね。部屋に鍵がかかっているのに、鍵は全て部屋の中にある。仮に堀君を殴った犯人が外に逃げたとしても、鍵のかけようがない。要するにここにいる3人の誰かが犯人と言うことですよね。じゃ、先生早く自首して下さい

渓:ちょっと待ちなさいよ、八月春。いつも通りあなたが殺ったんでしょう? 自首するのはあなたでしょ。

春:まだ死んでませんけど、堀君。それに、いつも通りって。自分のところの助教をそういう目で見ていたんですか。

渓:うん、もちろん。

春:まあ、そうだとは思いました。でも、私じゃないです。そんなつまらないこと隠してもしょうがないですし。

渓:じゃあ、消去法でハナマキ。停学1ヵ月ですむようにしてあげるから、自首しなさい。

葉:否、私による所業ではありません。

渓:所業って…。じゃあ、あれか、自滅か

春:いや、転んで打ったわけでもなさそうですし、後頭部を自分で殴るのって、まず無理ですよね。これは誰かにやられたとしか。

渓:ふむん…じゃあ、とりあえず、こういう仮説はどうかしら。


続く。

夏休みなので、普段にない試みを。植物学的に楽しんで頂ければ幸いです。

 ランキングは月刊ブログとしては健闘しているかと。今回の試みは間が空くとなんだか訳がわからなくなるので、頑張って更新します。お時間のあるときにでもクリック投票を→

脅威な教育

  • 2008.08.01 Friday
  • 08:00

もはや恒例となった感もあるが、久しぶりの更新である。危うく今月の更新は0となるところだった。なぜこんなに更新が少ないかというと、純粋に忙しいからである。はっきり言って今年度に入ってからの忙しさは尋常ではない。おそらく大学の定員削減の影響だと思う。

ともかく、これだけ忙しいと早く学生を育てて、一人前にしないととてもやっていけない。いつまでも手取り足取りでは、とても時間がたりないのだ。これからは多少スパルタ気味になるが、がんがん教育していく必要がある。


助教の八月春(以下、春):それは、つまり、さらに厳しい態度で学生に接するということですか。

ワタシ(以下、渓):うん、まあ、そうなるわね。

春:なるほど。要するに圧政から暴政へとステップアップすると。

大学院生の葉名真樹子(以下、葉):暴動必至

渓:あのねえ、今までのどこが圧政なのよ? もうこれ以上ないくらい学生に対して優しいでしょ、ワタシは。

春:まあ、獅子が我が子を千尋の谷に殴って突き落とすときに「ベアーナックルをつけずに素手で殴って突き落とすんだから、ワタシも優しいなあ」というくらいには、優しいですね。

葉:先生の態度より優しさを検知するのは、バファリンから優しさを検知するのと同程度に困難かと。

渓:あなたたちに言われたくないわね。だいたい、ワタシは西月先生みたいに学生を毒蛇採集のために孤島に送り込んだり、毒サソリ採集のために砂漠に置き去りにしたり、忘年会でぶりがに鍋をやったりしないでしょう? 十分、優しいじゃない。

春:比較対象が間違ってますね、完璧に。ともかく、これ以上厳しくしたら、うちでも堀君のように犠牲者がでかねませんよ。…彼も、今思えばいい奴でしたね。どうでも

渓:いや、堀君、死んでないから。たぶん。ま、ワタシも別に厳しくだけしようと思っている訳じゃないのよ。メリハリはつけるつもりだから。時に優しく、時に厳しく。まあ、教育の基本ね。

春:なるほど、つまりアミとムチですね。

葉:網で捕らえて、鞭で打つ

渓:…万全の攻撃態勢ね、それ。違う。アメとムチよ、アメとムチ。やっぱり、ある程度の報酬系がないといくら厳しく教育してもだめなのよ。

春:ふむん、まあ、それは分かるんですが…この研究室における「アメ」って何ですか? ちょっと想像がつかなくて…あ、脅える学生に対して「命だけは助けてやる」と言ってあげることとか?

葉:生存権の確保ですね。

渓:どんなマフィアの組織だ、うちは。アメって言うのは、たとえば、そうねえ、学生が暑い中遅くまで実験をしていたのに結果がうまく出なくて、徒労感が漂っているときに、ワタシのポケットマネーでパーッと飲んで雰囲気を変えるとか、そういうのかな。

春:パーッと飲む…毒をですか?

葉:確実に雰囲気激変


どちらかというとあなた達に飲ませたいわね。

 それにしてもついに7月は1回も更新できませんでした。いや、本当に困ったものです。何とか、時間をつくりたいと思うのですが、なかなか。授業も終わったので(野外実習がありますけど)少しは更新ペースが上がると思うのですが。ただ、授業のない時は学生の研究指導が集中的にできる時期でもあるので、特に卒研生が多い今年はそちらに時間を割かれる可能性が高いです。やっぱり、教育が重要ですね。

 ランキングはだいぶ下の方に来てしまいました。まあ、1ヶ月も更新してないのですから、当然か。とりあえずぼちぼちやっていきますので、お時間のあるときにでもクリック投票を→

奇特な特訓

  • 2008.06.30 Monday
  • 08:00

 久しぶりの更新である。というのも、現在ややトラブルを抱えているからである。

 実を言うと、そこまで神経質になることもないとは思うのだが、今年卒業研究のために研究室に入ってきた4年生の実験がうまくいっていない。まあ、うちの研究室は他の生物系の研究室とは違って、実験と言ってもは植物の形態の観察とDNA系統解析が中心になるのだが、それが芳しくない。

 今年の卒業研究生はワタシの研究室にしては多い(例年1人)、男性1名、女性2名の計3名なのだが、その男子学生の実験が特にうまくいっていない。電子顕微鏡の試料をつくってもぼろぼろになってしまうし、組織切片はそもそもうまく切れていない。何というか、相当不器用なようだ。まあ、卒研生は研究室に入ったばかりなので、失敗が多くて当たり前なのだが、それでも6月ともなればある程度できるようになってくるものだ。しかし、今年の新人は今までにないくらい、できない。さてどうしたものか。


助教の八月春(以下、春):先生が学生の心配をするなんて。これは明日は雨が降りますね。血の

ワタシ(以下、渓):今すぐにでもあなたの上に血の雨を降らせたい気分ではあるけどね。

葉:床が汚染されて実験に支障が出ますので屋外での実行を推奨します。

渓:全く、たまに人が真面目に研究室のことを考えるとこれだからやる気がなくなるのよね。

春:「たまに」っていうのが大いに問題がある気がしますが。まあ、それはいいとして、加藤君ですね、うまくいってないって言うのは。

渓:うん、そう。彼、どうにも不器用なのよねえ。学力とやる気は普通にあると思うんだけど。細かい作業ができないみたいでね。

春:ふむん、そうですか。では、特訓しかないですね。まあ、時期が早い気もしますが、まずは千本ピペット<から。

渓:…ちょっと待て。特訓っていうのはまあいいとして、その千本ピペットって何? 

春:ピペットマンを使って1000種類の試薬を意味なく作る、渓中研恒例の新人歓迎行事ですが、何か問題が?

渓:あるに決まってるでしょ。人が知らない間に勝手に妙な研究室行事を作るなっ。通りで最近夏になると急に試薬代が上がると思ったわ。まさか、他にもないでしょうね。

葉:大丈夫です。後は寒中泳動のみです。

渓:カンチューエイドー? 何それ。

春:真冬の最も寒い時期に屋外に出て電気泳動をするという新年恒例の研究室行事ですけど。ちなみに男子はついでに幕張の海で寒中水泳をしつつ、ぶりがにの採集もしてもらっています。もちろんご存じですよね。

渓:知るわけないでしょ。初耳よ、初耳。要するにそうやって4年生をいじめていた訳ね。通りで入ってくる学生が少ないはずだわ。

春:いじめなんて、とんでもない。彼らのことを思えばこその仕打ちです。

渓:いや、仕打ちって言ってる時点でいじめだと思うんだけど。

春:いいですか、先生。並の人間では、先生の放つ毒気にあてられたら半年と持ちませんよ。それを私が特訓することによって耐性をつけさせ、何とか1年持ちこたえさせているんじゃないですか。

葉:毒をもって毒を制す

渓:誰が、毒だ。全く、とにかく今年からその特訓はやめなさい。死人が出ないうちに

春:しかし、だとするとどうやって新しい卒研生を鍛えればいいんですかね。百人組手でもやりますか?

渓:…念のために言っておくと、うちは植物学の研究室なんだけど。特訓はいいけど、もっと植物学の知識が養えるような特訓をしなさい。

葉:毒草百種早食い競争

渓:知識を養う前に死ぬと思うわ、その特訓は。だからね、特訓そのものはワタシも否定しないわ。でも、無駄に体力を使ったり、毒を使ったり、ぶりがにを使ったりするのは全却下。

春:ふむん、しかし、そんなに制限ばかりでは、学生がラスボスである渓中先生を倒す力がつけられないのですが。


まずは、中ボスの助教を倒して欲しい。

冒頭でも書きましたが、久しぶりの更新です。ブログだけではなく、研究の力も最近はあまり更新されておらず、自分自身の特訓が必要だな、と感じています。1000枚標本でもやろうかな。

 ランキングはさすがに順調に降下中。まあ、徐々に更新して徐々にあがっていきたいと思います。お時間のあるときにでもクリック投票を→

恭順な教授会

  • 2008.06.13 Friday
  • 00:27

 教授会に出たくない。ワタシは一応教授会のメンバーになっているので、月に1回は学部の教授会にでなくてはいけないのだが、これが非常に面倒くさい。そもそも国立大学法人になってからの教授会は(まあ、昔の教授会のことは話に聞くだけだが)重要なことはほとんど審議しないといっても過言ではない。。大半の重要な事項は各種委員会によって決定されていて、教授会では報告だけである。

 せいぜい重要なのは人事関係くらいで、例えば新任の助教、講師、准教授、教授の採用や昇任に関しては教授会で最終的な採決を取り、承認されなければならない。しかし、これも事前に採用予定の各分野の人事委員会で審議され、推薦されてくる人物の信任投票を行うだけで、よほど問題がない限りは承認される。

 報告事項などについて、もちろん意見を言うことはできるが、言うだけであまり反映されているようにも思えない。だいたいいつも発言するのは一部の年配の教授と決まっており、若手の教授や准教授はあまり話さないのが普通だ(例外もあるが)。ということで、行ってもただただ人の話を聞くだけで、きわめて退屈なので行きたくないのである。しかし、一応出席は義務と言うことになっている。もっとも、何か理由(その他の会議、公務出張、病気・怪我など)があればでなくても良いのだが。


助教の八月春(以下、春):怪我でよければ理由をつくって差し上げますが。

ワタシ(以下、渓):圃場の草を刈る大鎌を持ってそういうことをいうのはやめてもらえるかしら。怪我ですまなそうだし。

春:いいじゃないですか、万一殉職しても教授会に出なくてすみますよ。

渓:殉職じゃなくてただの殺人でしょう、それは。

大学院生の葉名真紀子(以下、葉):では、疾病に起因する欠席は如何ですか。

渓:…で、その手に持っているビーカーに入った粘度の高そうな謎の紫色の液体は、何?

葉:企業秘密

渓:ハナマキは裏で本当にそういう会社をやっていそうだから怖いわよね。

春:まあ、学生が起業する大学ベンチャーも奨励されていますから、それもいいんじゃないですか。

渓:そういうベンチャーは奨励されていないと思うわよ、絶対。それにしても出たくないなあ、教授会。八月春、代わりにでてくれない?

春:つまりなべやかんですか?

渓:…は?

春:いえ、通じなければ結構です。しかし、いくら何でも先生の代役というのは荷が重すぎます

渓:そう? 大丈夫でしょ。

春:いえ、まずは悪魔に魂を売らないといけませんからね。大変です。

渓:あら、あなたならとっくに売ってるかと思ってたけど。というか、買う側でしょ。まあ、そういう戯れ言は置いておくとして、何とか出なくてすむ方法はないかしら。

葉:先生、発想の転換が必要です。教授会を享受するよう自助努力を実行すれば、自然と出席の意志が創出されます。

渓:教授会を享受って…まあ、ダジャレの部分は深く追求しないとして、要するに教授会を楽しめってこと? 無理よ、あんなつまんないもの。

春:先生ならできますよ。だって、先生の専門の植物形態学も一般人から見れば教授会以上につまらないと思いますよ。そんな学問をこうやって仕事にできるんですから、大丈夫。

渓:…まあ、それは否定しないけど、しかし、それとこれとは話が別でしょ。例えて言うなら、そうねえ、C県の誇る某プロ野球チーム・ロッテの試合を楽しむ変わり者は希にいても、コミッショナー会議を楽しむ人はいないでしょう。

春:そんなことを言ってるとロッテファンの怒りを買って、明日は幕張の海に浮かびかねませんよ。

渓:そういうことをするファンはあなただけだから。でも、まあ、わかる例えだと思わない?

葉:そうした懸念は受動的に教授会に参加することに起因すると考えられます。従来以上の積極的参加姿勢で臨めば、享受間違いなし。

渓:積極的ねえ。もっと発言しろってこと? 別にそうやってもあんまり楽しくはないと思うんだけど。

春:つまらない発言をした教授を殴っちゃうと言うのはどうですか。先生はすっきりするし、結果的に先生もいなくなって私達もすっきり。まさに一石二鳥。

渓:ついでにつまらないことしか言わない助教も道連れにするけどね、その場合。で、ハナマキはもうちょっとましな考えがあるわけ?

葉:秘策が存在します。

渓:…その策は秘めたままにしておいた方が良さそうな気がひしひしとするけど、万が一ということもあるから聞いておこうかしら。どういうアイデアなの?

葉:露西亜的回転板です。

渓:…なにそれ?

春:ロシアンルーレットのことじゃないですかね、たぶん。なるほど、教授会でロシアンルーレットをやって毎回1人ずつ減らしていけば、みんなはらはらどきどき楽しめるし最終的には1人だけになって会議もしなくてすむから一石二鳥ってことね。

渓:何度も言うようだけど、日本には銃刀法違反という法律があるんだけど。

葉:私の提案する露西亜的回転板は銃は不使用です。

春:銃じゃない? じゃあ、バルカン砲ね? あれも回転式だし。

渓:ちょっとあなたは黙ってなさいよ。で、具体的に何をするわけハナマキ?

葉:はい。伝聞によると、教授会では緑茶が提供されるとか。

渓:うん、まあ、出るわね、お茶が。

葉:その緑茶を露西亜紅茶に変更します。

渓:ああジャムの入ったロシアンティーのことね。…何かオチが読めてきたな。

葉:一人分だけ液体果実砂糖漬けの代用としてこの紫色の液体を入れて特製紅茶の杯を用意し、他の通常露西亜紅茶の杯と一緒に提供します。誰が特製露西亜紅茶を飲用するか否かで、会議が娯楽の場に。結果は銃を使用した場合と同様、一瞬で判明しますので、即座に楽しめます。

春:確かにロシアンルーレットね、それ。


しかし楽しいかな、それ。

 と、このブログを書いていたら某大学でまたもやお茶にアジ化ナトリウム混入の事件が。そんな時に不謹慎だ、と怒られるかもしれませんが、まあ、怒られることには慣れているのでそのまま更新します。それに紫色の液体が毒とはどこにも書いてありませんし。ワタシは絶対飲みませんけど

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壮大な相談

  • 2008.06.07 Saturday
  • 12:00

 最近、何人かの同業者と話していると「学生が研究室に来なくなった」という愚痴をよくこぼされるようになった。聞くと「ちょっと厳しいことを言ったら来なくなった」「実験がうまくいかないのでモチベーションが下がって、結局来なくなった」など理由は様々だが、教員側の立場からすると「最近の学生は忍耐力がない」ということらしい。

しかし、ワタシはこういう考え方には反対である。ポスドク1万人化計画のために大学院生の数が膨れあがり、その一方で大学や研究所のポストは増えるどころが削減される一方。そんな将来がはっきりしない状況で、学生が純粋な気持ちで研究に取り組むのは難しい。ところが、教員側は昔と変わらず「いい研究さえすれば、何とかなる」というスタンスの人間が大半だ。

もう少し教員も現状を理解し、様々な角度から研究指導をおこなうことが必要なのではないだろうか。そうすれば、もう少し登校拒否になる学生も減ると思うのだが。


助教の八月春(以下、春):うちの研究室は来なくなった学生は今のところいませんが、絶対に教員の指導がいいからではない気がしますね。

ワタシ(以下、渓):…まあ、別にワタシ自身、指導が行き届いているとは思わないけどね。でも、じゃあ、何で来なくなる学生がいないのかしらね。

大学院生の葉名真樹子(以下、葉):恐怖政治

春:私もそう思います。うちの研究室の場合、来ないと家に火をつけられそうですからねえ。

渓:誰がつけるのよ、誰が。しかし、まあ、考えてみれば奇跡的よね。50キロの漬け物石を片手で持ち上げる目が笑っていない性格破綻者の助教に、1回聞いただけでは理解できない言語を操る目どころか全く笑わない博士課程学生。そんな人間がいる研究室、ワタシが卒研や修士の学生だったら、絶対に関わり合いになりたくないもの。何で毎日ちゃんと来てるのかしら?

春:何かその疑問は教員として根本的にどこか間違っている気がしますが…。まあ、先生の場合、人間としても根本的に

渓:根本的に?

葉:

渓:…まあ、自分がいい人間だとは決して思ってないけどね。しかし、そこまで面と向かって言われるとかえって腹が立たないわね。

春:その割には手に金属バットを握りしめていらっしゃいますが…。

渓:まあ、ちょっと素振りをしようかと。しかし、何にせよきちんと来ているのはいいことね。

春:そうですねえ。まあ、確かに何でうちの学生達がちゃんと来ているのかはよく分かりませんが、とりあえず学生が来なくなってしまう研究室の傾向は明白ですね。やはり、指導教員や助教、先輩からのプレッシャーが大きいみたいですよ。ただでさえ最近の学生は忙しいのに、実験しろ、論文書け、ぶりがに取って来い、と毎日のように言われたら、だんだん来なくなるでしょう。

渓:ワタシだったら、「ぶりがに取ってこい」と言われた時点で即刻来なくなると思うけどね。ハナマキ、学生側からするとどう? どういうときに大学に来たくなくなる?

葉:体温が四十二度に達した時

渓:それはワタシも来て欲しくないわね。そうじゃなくて、こう、精神的な理由で来たくない時って、どんな時?

葉:人間関係に起因する疲労時です。

渓:へえ、あなたでも人間関係で悩むことがあるのね。よし、ワタシでよければ相談に乗るわよ。

春:先生に人間関係の相談をするのは、殺人鬼に町内の見回りを頼むようなものだと思うんですけど。

渓:それはあなたでしょ。こう見えてもワタシは大学院生の頃はよく後輩から相談されたのよ。渓中さんはKGBみたいに何でも知ってますね、って褒められたこともあったっけ。

春:それは絶対褒めてないですね。実は私もよく相談されていましたし、今も結構学生から相談されるんですよ。人間関係のことを。相手にどうやって思いを伝えたらいいですか、とか。ハナマキからも相談を受けたわよね?

渓:ふむん、意外ね。恋の相談をあなたにするとはね。ハナマキ、こんなの相談して役に立つわけ?

春:いえ、恋の相談じゃないですよ。相手にどうやってこの恨みを伝えたらいいですか、という相談です。で、藁人形の作り方とか五寸釘の打ち方を教えてあげるんですが

葉:効果抜群


そうでしょうねえ。

まあいろいろと書きましたが、現実にはなかなか現状を踏まえて指導するのが難しいというのも事実。どうしても教員(教員でなくともそうだとは思いますが)は自分が育ってきた時代の常識を前提として学生に接してしまうものです。しかし、現在は本当にこれまでになく大学やその周辺の研究環境が変わってきているので、「昔はこうだった」では通用しないということも肝に銘じる必要があると思います。

週1更新のため、ランキングはやや低調か。とりあえず、最低限週1回、できれば週2,3回を目指して更新していこうと思っています。お時間のあるときにでもクリック投票を→

横暴な週間

  • 2008.05.06 Tuesday
  • 10:55

世の中はゴールデンウィークまっただ中。今年は日程の関係であまり長い休みではないとはいえ、最低でも4連休にはなる。世間の人々は休暇を満喫していることだろう。しかし、研究に対する高い熱意で有名な我が研究室には休みはない。今日も、毎年ゴールデンウィーク恒例の千本ノックのため、ワタシ、助教の八月春、大学院生のハナマキこと葉名真樹子の3人が研究室に集合している。

 という愉快なジョークを言ってしまうほど、今の私たちは追い詰められている。というのも、某書類(科研費の報告書とも言う)の締め切りだったのが連休明けだったのを我が研究室の助教がすっかり忘れていたのだ。この科研費は呉越同舟を地で行く渓中、八月共同研究なので、その事実を知った私が八月春とあとこの科研費で研究をしている葉名真樹子を緊急招集し、必死で書類を書いている。しかも書いている間に、論文のリバイス、学生レポートの採点、ぶりがにの世話など、連休明けまでにやっておかなくてはまずいものが次々と判明し(まあ、これは主にワタシのせい)、まさに猫の手も借りたい状況になっている。


助教の八月春(以下、春):よーし、じゃあ、やりましょう。

ワタシ(以下、渓):…何を? そのグローブは何?

春:あれ、千本ノックをやるんじゃないんですか?

渓:よく読みなさいよ、「愉快なジョーク」って書いてあるでしょ。

春:読みましたよ。「研究に対する高い熱意で有名な我が研究室」っていうところが、愉快なジョークなんですよね。いやあ、もう、読んだ瞬間大笑い。はははっは

渓:…だめだ、書類書きの疲労で壊れている。こうなったら、ハナマキの若さに期待するしかないわね。ハナマキ、報告書のあなたがやった分の文章、できた?

葉:順調進行。完成目前。

渓:よし、こういう時は機械的な性格が役に立つわね。

春:あ、先生、ハナマキなら、2時間ほど前から故障してますよ。何を話しかけても、それしか言わないんで。

渓:…本当? ハナマキ、八月春の暗殺計画は完成した?

葉:順調進行。完成目前。

春:ほら。

渓:ふむん、本当にあなたに殺意を抱いているって言う可能性も大だけど、まあ、確かにこれは…。というか、ハナマキ、異常に顔が異常に赤いんだけど熱でもあるんじゃない。

葉:順調進行。完成目前。

渓:いや、それはいいから…うわ、熱い。こりゃあ、38度以上はあるわね。いったいどうしたの?

葉:原因明瞭。五月病

渓:いや、絶対違うでしょ。五月病ってそういう病気じゃないし。

春:五月病って5月にNASAから漏れ出した未知の地球外遺伝子組み換えウイルスが引き起こす謎の奇病ですよね。

渓:どういう病気だ、それは。五月病って言うのは新しい環境に適応できない新人がなってしまう、一種の無気力病でしょ。

春:もちろん、知ってます。愉快なジョークですよ、愉快なジョーク。あはははっは

渓:愉快でもないし、ジョークでもない。というか、笑いが乾ききっててきわめて不快なんだけど。

春:しかし、自分が仕事をしているから言う訳じゃないですけど、ゴールデンウィークって良くないですよね。4月になって新しい環境に移った人達が、なれない環境にストレスを感じ始めたころに連休なんて。そんなに休んでしまうと、そういうストレスを感じていた新人達は休み明けに学校や職場に来るのがますます嫌になりますよね。まさに五月病を誘発する要因になっている気がします。うちに新しく入ってきた卒業研究生と大学院生だって、ちゃんと来るかどうか、結構心配ですよ。全く、どうしてこんな時期に連休なんですかね。

葉:米政府陰謀の可能性大

渓:いや、ハリウッド映画じゃないから。しかし、確かにこの時期に連休じゃなくてもいい気はするわよね。6月くらいの方がありがたい気がする。

春:ということで、今度からうちの研究室ではゴールデンウィークには五月病にならないように新人向け再研修をやって、休みは6月に取ることにしましょう。どうせ、先生もワタシも有給がたまってますし。学生は、まあ、1週間くらい自主休講でも何とかなるでしょう。

渓:新人向け再研修ねえ…それって何をやるの?

春:もちろん、千本ノック


100%五月病になります。

 横でみーみーとエラー音を出し始めたハナマキが少々気になりますが、本当に各種書類を完成させないとまずいので、まずは書類に集中します。怠け者の盆働きとはよく言ったものです。とりあえず、ハナマキはリセットボタンを押しておけば何とかなるでしょう。

 ランキングの方はおかげさまで好調。アセンションの背中も見えてきました。ワタシも悔いなく2012年を迎えたいので、お暇な時にでも投票クリックを→

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